近畿大学 産業理工学部 生物環境化学科 大貫 宏一郎先生
Kindai University
がんのリスクを軽減する可能性もある健康食品の魅力とは
Onuki Koichiro
大貫 宏一郎 先生
近畿大学 産業理工学部 生物環境化学科 教授
健康食品でありとあらゆる悩みを解決する。その研究を進める大貫先生の研究室を紹介
私たちが生きていく上で必要な習慣の一つとして食事があります。不規則な食生活や栄養バランスの偏りにより、体調を崩したり、肥満や生活習慣病を発症してしまいます。
心と身体の健康を維持するためには、栄養バランスの取れた食事が重要で、足りない栄養を補ってくれるのが健康食品です。
ダイエットをしたい!肌をキレイにしたい!など、様々な人の悩みを健康食品で解決する先生の研究について話を伺いました。
―先生の研究内容について教えてください
私は、健康食品に関する研究を行っています。
例えば、霊芝というキノコがあるのですが、このキノコにはどんな成分が入っているのか、食べたらどんな効果があるのかというような研究です。
この研究を始めようとしたきっかけは、大学での恩師との出会いです。
大学に入学した頃の私は、目に見えるものや便利なものの多くが工業製品なので、工学が人類に一番人類に貢献している素晴らしい学問だと思っていました。しかし、恩師が栄養学という授業で、「人間を形作っていてコントロールできるのが食品だ」ということを話していて、こういった人間や文明を作り出しているのが食品なのかと感銘を受けました。そこから食品の学問や研究にハマり続けています。
私の研究は、成分を分析する研究、人が食べた際の効果を調べる研究、また試験管の中でできる基礎研究など多角的に実施しています。例えば、まず成分を調べて、痩せるのではないか?肌に良いのではないか?というものを見つけて、実際に人で実験をするような感じです。
先程の霊芝に関しては、がんに効くと言われています。
そこで、がんの予防の効果を示すために、「尿検査でがんになるリスクがわかる」という研究をしている先生と共同で研究を始めました。実際に被験者さんを使って、どんな食材でがんのリスクが減るのか、それとも増えるのか、その後も追跡して研究を進めています。
がんを治すような基礎研究は既に多く行っていて、医療品と違う効き方で生物毒性がなく、がん細胞を増やさないといった効果を出しました。しかしながら、この事実を元にして単純に「人が食べればがんにならない」、「がんの人を良くする」という事は中々言いにくいです。健康食品を研究してると言うと胡散臭いと思われることがありましたが、今は改善してきました。この食品はこういった理由でがんを治すというようなことを研究するのが一番大きなライフワークです。
また、多くの体の不調に対しても研究をしているのですが、その幅がさらに広くなれば良いなと思っています。去年はいびきを改善する研究を行ったり、最近は「妊活」に関する研究もしました。昔は子どもができないのは女性に問題があるというような雰囲気になっていましたが、もしかしたら男性の方に問題があるかもしれないといったことが、最近サイエンスが進むにつれて知られるようになりました。男性用の妊活といったサプリも既に出始めていて、そういったあらゆる人の悩みを食べ物で解決していきたいと思います。
―研究室について教えてください
私の研究室では、研究テーマの選び方は自由です。
それぞれ学生の興味に合わせて、一人一つの研究テーマに取り組んでいます。例えば、「肌」に興味がある学生でしたら、化粧水や肌に効くサプリメントの研究です。
数十名のモニターさんに使用してもらい、その方々の変化を測定して実際に効果があったかどうかを研究しています。
また、私の研究は企業との共同研究が多いので、既に進んでいるプロジェクトからテーマを選ぶ学生もいます。
―研究を通じて学生に教えたいことは?
私の研究は企業や地方自治体などからの依頼が多いので、共同研究として進めることが多いです。そのため、研究は何かしら社会と繋がっているので、ただ研究するだけではなく、その研究をすることによってどれだけの人が喜んだり、研究がどう社会の役に立つのかということを知ってもらいたいです。
学生には会議へ同席してもらったり、被験者さんの測定を実施してもらったりと一般の人とコミュニケーションを取るような経験をさせています。
この経験は就職した後にも即戦力になりますので、就職でも有利になると思います。
こういった研究を通じて社会というものを自分の肌で感じて欲しいです。
―近畿大学の魅力は?
就職のサポートが手厚く、近畿大学のブランド力が魅力です。
近畿大学は受験者数が日本一で、とても勢いのある大学です。年々知名度が高まっていて、近畿大学にいること自体が財産にもなります。実際、大きな会社に就職をしている学生も多くいます。先生も素敵な方々が多く、私が感じるように、学生にとっても過ごしやすい環境が整っていると思います。
―高校生へ伝えたいことは?
大学名や学部などの分野だけでなく、先生や教育方針で大学を選んでほしいです。
多くの方は良い大学に良い先生がいると思いがちですが、必ずしも良い先生が良い大学にいるとは限りません。
私の恩師も60歳で紫綬褒章を取られたような先生ですが、自分のやりたい事ができる大学に移って楽しそうに仕事をされています。国立大学はナンバーワンを目指すような教育方針が多く、教員側も教えるというよりは駄目なところを指摘する傾向があります。
私立大学では、基本理念から違っていて「卒業をしたら友達は基本的に仲間であり、一緒に成功していく」というようなことを大学で教わります。
大学というのは人格形成に大きく影響します。今卒業生とも一緒に仕事をしていますが、大学での影響が強く残っていると感じます。大学によって自分の存在自体も変わってくるので、大学選びは偏差値などだけではなく、建学の理念やカリキュラムなどから選んで欲しいです。
研究室の先輩たちの主な進路先
株式会社えがお、株式会社やずや、株式会社ゼンショーホールディングス、食品関係、研究職