九州産業大学 建設都市工学部 住居・インテリア学科 香川 治美先生
Kyushu Sangyo University
居住環境の構成要素をハカって快適で健康的な暮らしを手助けする
Kagawa Harumi
香川 治美 先生
九州産業大学建設都市工学部住居・インテリア学科准教授。建築環境・設備工学の視点から、住まい手にとって快適で健康的な居住環境を科学的根拠に基づいてデザインするため、居住空間に潜む課題の解決策を明らかにする研究を行なう。
私たちの住環境は、多様な要素に取り囲まれている。
住環境を構成する要素をハカ(測・量・図・計)って快適性を追究する研究室を紹介。
壁や窓、天井や床、温度、湿度、気流、騒音など物理的な要素に加え、着衣や体温、代謝など生活者の生理的な要素、期待や不満など生活者の心理的な要素で構成される住環境。
その中から住まい手の快適性や健康に大きく影響しそうな要素を選び、調査・実測・実験・検証してハカっている居住環境デザイン研究室について話を伺った。
―香川先生の研究内容について教えてください。
建築都市工学部住居・インテリア学科といえば、まちづくり、住宅の設計や施工、インテリアのデザインを思い浮かべる方が多いでしょうが、私は快適で健康的な居住環境デザインに関する研究と教育をテーマにしています。
居住環境とは、住まい手を取り囲む空間すべてのこと。インテリアはもちろん、住まい手が身に着けている被服、日光や風雨などの気象、臭いや音も住環境を構成する要素です。私は、住まい手が快適で健康的な暮らしを送れる居住環境について研究しています。
―居住環境デザイン研究室について教えてください。
時代とともに技術が進歩していくなかで、住まい手が「快適に過ごしているか」「健康的に過ごしているか」を研究しています。
これまでのエアコンなどの人工設備に加え、太陽の光や熱、風などの自然エネルギーを利用したパッシブデザインを組み合わせたものが、未来のいい住まいのデザインのスタンダードになっていくでしょう。「いい住まいで暮らしたい」という願いは世界共通の思いです。そのために住環境を構成するさまざまな要素をハカり、快適で健康的な暮らしをデザインするうえでの科学的根拠としています。
―住環境の構成要素をハカるとはどういうことでしょうか?
私たちの住環境は温度や湿度、建材や空調、色彩、人数などの要素で構成されており、それらの組み合わせによって住まい手の感じ方は変わりますよね。また、住まい手の性別や年齢によっても感じ方は異なります。そのため、本研究室ではさまざまな住環境の構成要素をハカって確かめているのです。
住まい手の快適性や健康に大きく影響しそうな要素の組み合わせを数式で可視化することで、快適で健康的な暮らしを理論的かつ工学的に明らかに出来ると考えています
―具体的にはどのようなことをしていますか?
2016年の熊本地震で被災した益城町の避難所で、長期生活する被災者の健康のための居住環境改善方法の提案を行いました。ヒアリング調査で「雨の日でも洗濯物を外で干せると便利」「風が強い雨の日は室内に雨が降り込んでしまう」という回答があり、改善策として応急仮設住宅に庇(ひさし)の取り付けを試みました。
―研究室の特徴や魅力を教えてください。
演習や実験など実技を伴う授業を通じて、学生自身に自分が持っている可能性、やりたいこと、自分にしかできないことに気付かせるようにしています。居場所や役割を持たせてチームワークやリーダシップを考える体験を促すほか、目標達成のための見通しや段取りを考える体験を促しています。個人・ペア・班での演習によるアクティブラーニングも実践。学習意欲や主体性、協働への意識が高まるように工夫しています。
また、これまで蓄積されてきた研究に関する書籍や機器も充実。退職教員からひきついだ旧式の測定器がある一方で、情報処理システムなど最新の設備やデバイス、Wi―Fi環境も整っています。
―高校生に向けてメッセージをお願いします。
居住環境デザインは、目に見えないものをハカって環境社会に貢献できる学びです。居住環境を構成する要素の組み合わせや制御の方法を工夫すれば、居住環境をより効果的にデザインできます。私たちの生活に興味を持って、憧れの住まいを丁寧に思い描いてほしいですね。住まいで暮らすのは私たちです(笑)。
さまざまな要素をハカって居住環境デザインについて研究すると、快適で健康的な暮らしのために何がいいのか、何が悪いのかを判断できるようになります。住まい手の気持ちを第一に考えた、住まいと住むことに対する「住リテラシー」を養いましょう。
先生やゼミ生と話し合いながら学ぶことができます。
建設都市工学部 住居・インテリア学科
3年生
谷口 奈々子 さん
人にフォーカスを当てた居住環境に関する学びがおもしろいです
建設都市工学部 住居・インテリア学科
4年生
藤津 将隆 さん
- Q 研究室を選んだ理由は?
- A 香川先生の授業を受けて、環境についてより詳しく学びたいと思いました。卒論制作はこれからですが、先輩方の卒論を参考にしながら、収納と住環境についての研究を引き継ぎたいと思います。
- Q 研究室の魅力は?
- A 和気あいあいとした雰囲気で、授業内容や進路についても先生や先輩と気軽に話せます。湿度や温度の測定器といった専門的な機器も充実していて、さまざまな研究テーマに役立てられそうです。
- Q 卒論では何について研究をしましたか?
- A 窓の違いが住環境に及ぼす影響についてです。ガラス(単板とペア)やサッシの材質(アルミと樹脂)による熱移動や空調効率、防音効果などを調べ、コストパフォーマンスを研究しました。
- Q 将来の希望は?
- A 私は不動産会社への就職が決まりました。住宅の間取りやインテリアだけでなく、生活に直結する設備面や機能面からも住まい手の快適な暮らしを提案できる営業マンになりたいと思います。
研究室の先輩たちの主な進路先
(株)AG福永設計事務所、(株)ASOアルファ、イワタダイナーズ(株)、ウエハラ工務店(株)、亀屋硝子(株)、(株)クリエイティブスタッフ大和、昭和建設(株)、セキスイハイム九州(株)、大英産業(株)、(株)太陽家具百貨店、大和ハウス工業(株)、高藤建設(株)、ファースト住建(株)、福岡エネルギーサービス(株)、丸栄化工(株)、マックスバリュー九州(株)
九州産業大学 建設都市工学部 住居・インテリア学科 居住環境デザイン研究室
福岡市東区松香台2-3-1
https://www.kyusan-u.ac.jp/